郷土料理の伝道師がつくる家庭の味「大根ずし」|室谷加代子さん【志賀町】

地元の食材を使った料理教室を開いていた室谷加代子さんは、2005年に「農家レストラン むろたに」を開店。お店を営む今でも料理教室は続いており、今年(取材時2021年)は80人以上の生徒さんがいらっしゃいます。
多くの生徒に慕われている室谷さんに発酵食などの郷土料理と料理教室についてお話を伺いました。

■ 地元の当たり前を味わう農家レストラン

農家レストランむろたにのメニューは地元でとれたものを生かした伝統的な食事が中心です。地元では昔から食べられていた「ごくごく当たり前」のお料理。地元の素材を使うこと。それは、こだわりというよりも「それを当たり前にしていきたい」という想いがあるそうです。

そんな室谷さんが作る伝統料理には、甘酒、甘糀を使った大根ずしやくるみ味噌などの発酵食も多くあります。甘糀はいろいろ使えるので、ホットケーキに入れたり、唐揚げに使ったりと家庭料理の中でも大活躍だそう。

「発酵食の中でも特に大根ずしを一番たくさん作っていますね。生徒さんにも作ってもらっています。」と言って、見せてくれたのは、大根と身欠きニシンを甘糀で漬け、ニンジンや柚子の彩りが美しい大根ずし。
室谷さんが大根ずしを作り始めたのは、ご主人の同僚の方のお母さまが作ったものをいただいたのがきっかけ。作り方を教えてもらってからご自分で作るようになったそうですが、若い人にも食べてもらいたいと、アレンジをしながら毎年作り方も変えています。

教えてもらった大根ずしは甘酒で作られていましたが、室谷さんは代わりに甘糀を使うようになりました。料理教室の生徒さんの評判も甘糀の方が良いのだそう。

「甘酒と甘糀の違いは糀の量です。甘酒の倍の量の糀で作ると甘糀になります。甘糀のほうが糀がたっぷり入って美味しいんですよ。」

身欠ニシンも皮を取った後、酢につけて臭みを取ったりと様々な工夫をしながら、室谷さんオリジナルの味で作っています。

■作った料理を大切な人と食べる喜び

以前は生徒さんは教室内で食べてから帰っていましたが、持ち帰りになった現在は2人分の料理を持って帰ってもらっています。生徒さんが帰る時に、家で旦那さんと一緒に食べるのを思い浮かべて嬉しい顔をしているのを見て、喜ぶ室谷さん。家庭の食卓への特別な想いがあるそうです。

「私は小さいときに母が病気でなかなかご飯を作ってもらうことができなかったんです。それが寂しかったので、多くの家庭で、ご飯を家族でおいしく楽しめる環境を作るお手伝いがしたいと考えました。その気持ちがいつしか料理教室を開くという形になっていったんです。」

元々はご自分の作る料理に自信がなかったそうですが、ある日、近所の方を自宅に呼ぶ機会があった際に、買ってきたオードブルをふるまいました。しかしそれには誰も手をつけず「せっかく母ちゃんの料理を食べにきたのに、なんで買ってきたオードブルなんや」と言われ、それから「私の料理を楽しみにしてくれる人がいる、私の料理でいいんだ」と自信がつき、今に至っています。

■ 室谷加代子さん にお話しを伺って

料理教室を多く開催していらっしゃる室谷さんも、少しでも美味しいものを作りたいと研究を重ねていらっしゃいました。お家で待っていらっしゃる旦那様に美味しい料理を届ける生徒さんを通じて、室谷さんの料理教室から、「発酵食がごくごく当たり前にある」暮らしと、その食卓を囲む幸せな笑顔が広がっていくことを感じられるインタビューでした。

店舗情報

名称農家レストランむろたに
住所石川県羽咋郡志賀町福浦港和光台ろ12
TEL0767-48-1321
URL農家レストランむろたにfacebookページ

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