明治創業以来、発酵ひとすじの 糀屋「高澤醸造」の三代目、高澤 理八さん。
昔は近隣に農家さんも多く、糀屋さんはお客さんが持ってきたお米を糀にして渡しており、その糀でお客さんはかぶらずしや味噌を作っていました。
現在は主にお味噌、他にも塩糀、おかず味噌、甘酒、かぶらずしや大根ずし等を販売していらっしゃいます。
■ 蔵つき酵母の糀が財産
かぶらずしは塩漬けした蕪に塩漬けした鰤を挟んだ漬物に近いなれずしの一種です。大根ずしが庶民的だったのに比べ、鰤を使うかぶらずしは高級品とされ、昔は献上品にも使われていました。理八さんが仰るように「冬の能登の風物詩」で、現在は主にお正月に食卓に上がる家庭が多く、お歳暮にも重宝されています。
お母さまの味を再現したそうで、石川県産のお米から作った糀と近郊の白蕪を使っています。販売を始めて30年ほどですが、全国のデパートの物産展でも人気で、毎年ファンが増えているのだそう。
こだわっている点は「やっぱり糀なんです。量もふんだんに使いますし、蔵つき酵母によって、その糀が旨味を出す。うち独特の味が出るってことなんですね。糀がすべてです」。
蔵つき酵母とは、長年の間に醸造の過程で生き延びた酵母が建物や床土などに付着している醸造場独特の酵母のこと。この酵母により糀の味が決まるので「これが糀屋で一番の大事なこと」と理八さんは言います。
「こういう建物も大事にしたいと思うんですね。先代が作ったものをね。糀と同じで。蔵つきの酵母がいることが、うちの最大なる武器なんです。とんでもない財産です。」
■ 糀をたっぷり使ったかぶらずし
職人の皆さんが手作業で丁寧に作っています。
蔵つき酵母の糀をお米に混ぜて、甘糀を作ります。
丁寧に混ぜてから、発酵させます。
白蕪は一つずつ手作業で皮を剥いていきます。
2日間塩漬けした蕪に、鰤を挟んでいきます。
たっぷりの甘糀と人参、柚子や唐辛子を蕪にのせていきます。
約一週間で完成です。冬の季節商品なので10月から3月まで作ります。
蕪の歯ざわりの良さと甘い糀がたまらない一品です。
■ 高澤醸造さんにお話しを伺って
100年以上もの間、蔵に棲みついている高澤醸造独自の酵母が財産であり、「私は糀だけで、発酵食だけで生きてるんです」と言いきる糀ひとすじの理八さんは、実践だけではなく、東京農業大学醸造科にて微生物が持つ発酵の力についてもしっかりと学ばれました。
三代目が長年培った発酵哲学も、既に決まっていらっしゃるという四代目、五代目に受け継がれていくことでしょう。
店舗情報
名称 | 高澤醸造株式会社 |
住所 | 石川県羽咋市下曽祢町ノ部50番地 |
TEL | 0767-26-0261 |
URL | https://www.miso-takazawa.jp/ |